2009.8.10

[ Home-Made Story1 ]
海へ行った夜
at Maemachi Art Center [山口市湯田温泉]



山口市の静かな住宅地に「Maemachi Art Center(通称:MAC)」はある。
名前だけ聞くと、コンクリートうちっぱなしか何かのおしゃれなアート空間を思い浮かべそうな名前だ。
しかし、実際は湯田温泉の歓楽街を抜けたあたりに立つ、結構ぼろい日本家屋一軒家。4年前に僕の個展で出会ったハットリくんと、その友人で僕も2年前にグループ展で一緒になったことのあるダイヤ君がシェアして住んでいる、ただの住居だ。
いや、ただの住居ではない。町からも近く物静かな住宅地にあり家のすぐ隣を素敵な小川が流れていて環境も居心地も素晴らしいことや、住人ふたりが秋吉台芸術村と山口情報芸術センターの関係者であることもあって、この家はアーティストや関係者のたまり場になっている。そして数年前、友人のトールがここに滞在し飲み会の席で、この家に「Maemachi Art Center(通称MAC)」と名付け玄関に看板まで制作して以来、なんとなくアート関係者のたまり場化していたこの家は、オルタナティブなアートスペースとしての機能や意識が芽生えた。今回はじめて行ってみると、家中の至る所にアーティストが置いていった作品やメッセージが残されていて、ローカルの良さを意識しつつ楽しんでいる、おかしな家になっていた。

さらに今回僕がここに来たのは、Re-Fort PROJECT Vol.5「砲台山から日食の日に花火を打ち上げよう」という企画の為なのだが。その為、イベントの為の資金が必要なので、ハットリ君とダイヤ君(あと山城くん)は、今までこのMACで行われて来た数々の宴会やアーティストの雑魚寝等を、「アートトークイベント」「滞在制作」等の聞こえの良い文章に書き直し…いや決して嘘をついている訳ではなく、実際にトークも制作も行われ人も集まっていた…、そこに名前を少し付けだけで、書類を作成した結果、町から助成金を取ることに見事!成功した。(彼らはそういう仕事のプロである)
いやはや、名前とはそういうものかもしれない…。ただ家にそれらしい名前をつけただけなのに、スペース自体がその名前に近づいていく…、さらにそこで行われていた宴会や話や雑魚寝もイベントにすり替わりって、Art Centerとしての能力を持ってしまったことは本当に面白い。

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このプロジェクトのために、今回1ヶ月間、MACにプロジェクトの内容を詰めながら完成する為にやってきた。
その他にも、プロジェクト代の助成金以外の必要経費と、自分の滞在費を捻出するために、ハットリ君ダイヤ君は友人知人伝に、山口市内のおしゃれなカフェバーで1ヶ月間ランチタイムにウェイターをする仕事(&そこでの展示)と、地元大学等での特別講義などの仕事を用意してくえた。昼間は地元で仕事、夜はMACでメンバーと話し合い&宴会。さらにこの「Home-Made Story」の元となる生まれてはじめてのワークショップをハットリ君企画で行ったりもした。本当に良い経験を与えてくれた。
個展、ワークショップ、連日のミーティング、カフェでの仕事、ラジオ出演、大学講義、暗室籠り、温泉、ビール、雑魚寝、ドライブ、刺身、温泉、ビール、ミーティング、カフェでの仕事…。
MACはいろんな地元の人が面白い集まってくる場所で、なんだかんだ毎日仕事をして遊びまくって大忙し日々だった。
山口市の雰囲気は、日本で一番人口の少ない県庁所在地で新幹線も止まらないせいか、のんびりしていて、温泉も海も山もあり、料理も酒もうまい、手を伸ばすと何でも手に入る部屋のような、でも東京のような情報や商品という意味ではない、本当に住んでいて気持ちのいい贅沢な場所だった。(ハットリ君は「いい本屋が欲しい」と嘆いていたが…)

プロジェクトが無事終了した翌々日、忙しくしながら「全て終わったら海に行きたい!」と言っていた企画を実現すべく、打ち上げと称して、海へドライブすることにになった。三十路を超えた3人で前日からせっせと海へ行く準備をし、朝まだ明けていない時間にMACを出発し、途中仕事先の同僚の女性(ストーリーをアップするため名前は伏せておく)を乗せた。山口を内陸へ向かい日本海を目指す。田園風景に夏の空に雲、車内は妙なハイテンションでの4人。
しかし、山を越え、日本海に抜けるとそこは嵐だった…。本州屈指の青い海角島のビーチに人はまばらで、波は荒いし、とにかく寒かった。だけど、泳いだ。凍えた体は帰りに温泉で暖めればいいのだと、その日は全力で前向きだった。
海も飯も温泉も終え、青青とした秋吉台の広大な草原をドライブしながら、家に帰る途中、「想い出や物語が詰まった、自分だけの料理ってあるか」という話になった。
ダイヤ君は「大学生の頃にすっごくお金がなくて、小麦粉をこねて焼いて食ってた料理かなぁ。なんかゴツゴツしてて、アフリカのパンみたいだったよ。アフリカのパンなんて、見たことも食ったこともないけどイメージでね」。
ハットリ君は「レシピはないんだけど、鍋とか宴会とかをMACでやった次の日の朝、冷蔵庫に残っている昨日の食材を物色して朝食を作るのが好きなんだよねぇ」そんな話をしてくれた。
あぁ、「アフリカのパン」「宴会の翌朝のアリモノ朝食」かぁ…、美味しい料理には作り方や食材のストーリーは語られても、些細な個人的な料理のストーリーって語られないし、面白いなぁ…、と思った。
以前MACに遊びに来た外国人のアーティストがMACの障子に「Heartbreak pasta」のレシピを書き残してあるという話も出て来た。
ただひとり残った女性は、元彼とのエピソード付きのタコライスの話をした。彼女のものすごくアバウトな料理に、男子3人とも爆笑。帰ったあと、是非!MACで実際に作ってほしいと嫌がる彼女に頼みこみ、そのまま食材をスーパーに買い込んで帰った。

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ダイヤくんが少し職場に行っている間に、残った3人でビールを買い込んで河原へ行った。夏の夕暮れ、河原の草原の上に寝そべって、お互いの将来のコトを話した。他に河原でのんびりしている人はいなかった。

昨年パリに居る時、も、時間はたっぷりあって、公園やセーヌの河原や図書館でぼんやり散歩したり本を読んだりり友人と宴会や食事をした。すごく気持ちのいい時間だった。
木や水があって、のんびりしていて、脳や悩みがすっきりして、急にアイデアとかが降ってきたり、そこには素敵な空間と時間があった。
でも帰国して最近、日本で公園や河原や図書館で昼間っからぼけっとしていると、なんだか人生の敗北者のような気がするのはなぜだろう。みんなのように普通に朝から会社とかに行っていない劣等感のような社会に参加していない疎外感のような。とにかく、公園や河原や図書館にはそういう空気がある気がする。
パリの場合、そういった場所は贅沢な時間を使うため場所だったきがしたけど、日本では行き場のない人が行く場所のように思えるのはなぜだろう。(特に都市部の)公園自体に入り辛いのはなぜだろう。
河原や公園や図書館って、町のなかにありながら、広大な外側へ繋がっているような開かれた空間な気がするのに…。ただ、今日ココにはその贅沢な時間と場所を共有できる友人がいる。

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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 [ Home-Made Story2 ] 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

::::::メニュー&レシピ::::::

・タコライス
ー材料ー
ご飯適量、とろけるチーズ適量、レタス適量、トマト適量
ひき肉(牛か豚か合びき)適量、タマネギ、塩こしょう適量、ケチャップ+醤油+ソース適量
ー作り方ー
タマネギをみじん切りにして、ひき肉といためる。それに塩こしょう適、ケチャップ+醤油+ソースを適量を入れて適当にいためる。ご飯にとろけるチーズとレタスとトマトとさっきのいためたものをのせて完成。



::::::ストーリー::::::

『タコライス』
元彼の家に住んでいた時、立ち読みをしていた本屋で「これが食べたい」と突然つぶやかれ。
家に帰って作ろうとしてみたけど、途中から面倒で適当に作ってみたら、「これが食べたかった」って言ってくれて、うれしかった。

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結局、彼女の「Home-Made Story」タコライス試食会は、MACにいつものようにゲストが何人か遊びに来たことで、テーブルを囲んでの発表会になった。
彼女のタコライスはあの独特な香りの「チリパウダー」などは全く入っていない為、タコライスではなく、「そぼろごはん」のような味だった。しかし妙に安定感のある味に、そこにいたみんなは「タコライスじゃない…、けど…、うまいかも…」とか「もしかすると…、俺もこれを食べたかった…のかも…」と、全員完食した。
タコライスを作った彼女自身はというと、ストーリー発表後、「本当に、数年前のそのとき以来にこの料理を作ったから、キッチンのことや食器の色とか、その時のことを今日料理しながらどんどん思い出して…」と少し興奮していた。
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by homemadestory | 2009-08-16 16:48 | story1
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活動
『Home-Made Story』は、アーティスト下道基行が主催するゲリラ企画。
どこかでパーティー/宴会が行われる際に、参加者の何人かに料理を作り出してもらい、その場でその料理にまつわる物語/エピソードを発表します。
「宴会/パーティー/食卓の風景」「各料理にまつわる個人的な些細な物語」「消えていくだろう家庭の些細なレシピ」を記録する。

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