[ Home-Made Story2 ] 打ち上げパーティー at モトタバコヤ [大阪此花] 7月からの山口県1ヶ月滞在を終えた。 8月からは急遽2ヶ月間またおかしな仕事が入り、大阪に住むことになった。 それは水都大阪2009というアートイベントが大阪中之島で2ヶ月間行われ、そこへ入れ替わり立ち代わりやってくるアーティストや関係者のためにオープンする、期間限定で臨時ゲストハウス『モトタバコヤ』の管理人というもの。さらにそれとは別で、そのイベントのゲストアーティストKOSUGEさんの現場サポートとしての臨時の仕事。 両方の仕事とも有り難いことに、それぞれ給料が出る為、2ヶ月で少し貯金もできそうだった。そして、ゲストハウスのある大阪の下町の風景も魅力で少し住んでみたいと思ったあった。あと何より、ゲストハウスの住み込みの管理人として、日本中を行き来しながら活動を続ける同期や先輩アーティストに単純に「どうやって生きている…」とかいろいろ聞いてみたい、という気持ちが強かった。 《昼》は、真夏の炎天下の中、毎日行われるイベントでのKOSUGEさんのお手伝い、現場では多くのアーティストやスタッフと接した。このイベントは10年程前から日本全国で盛んに行われている地域型/都市型アートイベントの大阪版で、良くも悪くも巨大な文化祭のような、期間限定の部活動のような現場。それが2ヶ月続くわけで、スタッフはお互いに仲良くなっていった。 《夜》は『モトタバコヤ』の管理人。業務プラス、毎晩ゲストとの宴会(芸術夜話?)が繰り返される…。 ちなみに、モトタバコヤは、高齢化等で空き家が増えた大阪市此花区梅香町に活気を取り戻すため(?)、地元有志とアーティスト等が取り組むイベントの一環で、地域のコミュニティスペース/公民館として、2008年から利用されていた、元タバコ屋の空き家の名称。今回の期間中はイベントの為に日本全国からやってくるアート関係者などにこの町を知ってもらおうと、イベントのサテライト的に格安の宿(1泊1000円)としてゲストハウス化した。つまりは、ここも地域型のアート系事業の実験台ということだ。 2つの仕事とも、今まで知ってはいたものの、あまり接することのなかった地域系のアートイベントやその辺りで動き回っているアーティストの実情が少しは垣間見れたし。九州から北海道まで日本全国から集まってくるアーティストと、毎日面白い話からくだらない話まで無差別に話し吸収する…、そんな濃厚な2ヶ月だった。 高校の頃、ポールオースター原作の映画『SMOKE』をすごく気に入ってしまい、ビデオで何度も何度も見た覚えがある。内容は、ブルックリンのタバコ屋を舞台に、ハーヴェイ・カイテル演じる渋いタバコ屋の亭主と、そこにやってくるお客たちとの人間関係のストーリー。 実は、この『モトタバコヤ』に下見に来たとき、ピンときた。交差点に立つタバコ屋の立地や、(大阪府とニューヨークでは見た目は大違いだけど)下町的な町の雰囲気など、映画の舞台と結構似ていて、「なにか素敵なことが起こりそうだなぁ…」と、ぼんやりとした期待をしていた。 そして実際2ヶ月ここで管理人をしてみると、お客さんが人が入れ替わり立ち代わりやってきて、自分とお客さんやお客さん同士など、人と人との関係や物語がどんどん繋がって混じり合って行く。それはまさに大阪版『SMOKE』の世界に自分が巻き混まれているようで、その雰囲気をタバコ屋の亭主ではなく管理人として、こっそり楽しんだ。 イベントが終了した翌日、KOSUGEさんのスタッフの打ち上げパーティーが、モトタバコヤを貸し切って行うことになった。(これは自分にとっては2つの仕事の打ち上げになった。) イベント期間中に仕事をしながら密かにリサーチを繰り返し、スタッフ5人の各1品&1話をメニューとして編集した『Home-Made Story』を、このパーティーに差し込む/コラボレイトすることにした。 打ち上げパーティーの合間に、ゲストハウスのキッチンを利用して、5人にそれぞれ料理を作ってもらい、タイミングを見計らってテーブルに出してもらい、その都度発表会が始まるのだ。 打ち上げに集まったみんなは、アーティストKOSUGEを中心に2ヶ月間ずっと一緒に働いていたし、すごく仲良くなっていたし、大学生の女性が多かったこともあって、夏合宿最後の日にみんなで秘密の話/恋愛話をするような…、そんななにか学生ノリの甘酸っぱい雰囲気になった。 今日でこのメンバーは解体される…そんな別れを惜しみつつも馬鹿騒ぎは朝まで続いた。 (そして翌日、近所から苦情がやって来た…) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 [ Home-Made Story2 ] 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ::::::メニュー&レシピ:::::: ・パーティー餃子 ・生春巻き ・冷凍唐揚げ ー作り方ー 冷凍唐揚げをレンジでチン。あとは味のほとんどついていない卵焼きとセットに、タッパーに入れるだけ ・中華風コーンスープ ー材料ー クリームコーン(缶詰)小1缶、牛乳2カップ、固形ブイヨン1個、塩少々、砂糖少々、コショウ少々、ごま油小さじ1~2、片栗粉大さじ1/2、水大さじ1 ー作り方ー 片栗粉と水を合わせて混ぜる。鍋にコーンを入れて、牛乳を少しずつ加えて溶きのばす。固形ブイヨンを加えて中火にかけ、木部らで混ぜながら3分煮る。ふつふつしてきたら、味を見ながら塩・コショウ・砂糖で味を調える。 いったん火を止めて、1を指でよく混ぜてからまわしいれ、すぐにきべらで混ぜる。再び中火にかけてとろみをつける。仕上げにゴマ油をたらしてまぜる。 ・長崎のおまんじゅう ー材料ー (あんこ)小豆300g 砂糖280g (皮)薄力粉500g ドライイースト18g(水100ccでとく) 水100cc 砂糖少々 ー作り方ー 前日に小豆を水につけてもどす。もどした小豆を鍋で煮てあくをとる。水分がなくなりあんこの状態になるまで火にかける。最後に砂糖をまぜてあんこのできあがり。 皮は、薄力粉に水で溶いたドライイーストを少しずつ足しながらこねていく。ドライイーストを足し終わったら、砂糖と水を足していく。手に着かなくなるまでこねる。 1個分のサイズにちぎって、あんこを入れて丸めて、発酵してふくらむのを待ってから15分程度蒸し器で蒸して、できあがり。(約20個分) ::::::ストーリー:::::: 『パーティー餃子』 ウチのパーティーの主役とえいば、お寿司でも唐揚げでもなく、なぜか幼い頃から、餃子でした。 パーティーの準備のために、みんなで餃子をたっくさんつくり、テーブルに置かれたホットプレートで山盛り焼く。それが、ウチのパーティーの風景。 (兵庫在住/大学生/19歳女) 『生春巻き』 好きな人の誕生日にパーティーをすることになった。 その頃、アジアンレストランで働いていたこともあって、得意の生春巻きをパーティーに持って行く為に、朝から準備して、冷蔵庫にラップをして入れておいた。 夕方、パーティーに持って行こうと、冷蔵庫を開けてみると、 生春巻きはカピカピに乾燥し、くっついてボロボロになっていて、悲しくて持って行かなかった…。 他の友人は彼の好物をいろいろと持って来ていて、彼が喜んでそれらの料理を食べていたるのを眺めた。 数日後、私の主催するパーティーに彼が来ることになったので、リベンジとばかりに生春巻きを完璧に準備していたが、その日に限って彼は来なかった。 彼が食べたことのない生春巻き。 (東京在住/26歳女) 『冷凍唐揚げ』 付き合って少し経った彼がいた。 私は実はそこまで好きにはなれなかった。 でも彼はいい人で、なかなか別れを切り出せないでいた。 あるとき、ピクニックに行くことになって、お弁当を作った。 そのとき、とても素っ気ないお弁当を作った。 冷凍の唐揚げを見るたびに思い出す。 (東京在住/27歳/女) 『コーンスープ』 これは彼がわたしに作ってくれたコーンスープです。 私はもうすぐ就職活動ということもあり、夏休み明け、毎日そのための講座があり 将来の不安や、その講座のストレスで疲れているときに いつものように泊まりにきた彼が「明日は俺が朝食を作るよ」といってくれました。 その日の朝、彼に甘えて、私はゆっくりベットに横になっていました。 台所では、彼が明日の朝食の準備をしている音が聞こえました。 彼が台所にたっていることがなんだか新鮮でした。 次の日の朝、彼が作ってくれた朝食は、ポテトサラダとホットドックとこのスープでした。。 (大阪在住/大学生/21歳/女) 『長崎のおまんじゅう』 幼い頃から、毎年お盆に長崎のおじいちゃんおばあちゃんの家に家族で帰った。 そんな時は決まって、おばちゃんはお昼におまんじゅうを作ってくれた。 本当においしくて、いとこや親戚が集まっていると、おまんじゅうはすぐになくなってしまった。 あんこを入れて丸めるところは、子どもたちも手伝ったが、難しくて皮が破れてしまった。 何度か、母親にそのおまんじゅうを作ってくれるようにたのんだけど、レシピをしらないのか、面倒くさいのか、一度も作ってくれなかった。 今年の夏、長崎に帰った時に、作れるようにおばあちゃんに習った。足が悪いのにわざわざ台所まで来てくれて、細かく指示してくれた。昔より丸めるのもウマくなったし、味もおいしくできて、おばあちゃんも「うまか!」と言ってくれた。 (京都在住/大学生/21歳/女) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 パーティーの翌々日、やっとパーティーの残骸の後片付けも終わり、2ヶ月暮らしたモトタバコヤで、ひとりぽつんと引っ越し作業をはじめた。 すると、ガシャンガシャン…、モトタバコヤの土間のシャッターを動かしている音する。驚いて外に出ると、かつてここでタバコ屋をやっていたおばあちゃんがそこに立っていた。 「おにいちゃんかぁ、まだここに暮らしてくれてるんやなぁ…。ありがとねぇ…」 タバコ屋をやめて数年、今は少し離れたところに娘さんと元気に暮らしているらしいが、たまにこの家が気になってやってくるのだ。 「2階で寝てはるの?あそこ床の間もあるから良いやろう… この家の木材は私の親の山から持ってきた良い木やから、丈夫でしょう」 おばあちゃんは愛着のあるまなざしで家を眺めながら話す。僕は、このモトタバコヤでおこった2ヶ月のこと、今日でココを出て行くことを話した。おばあちゃんは、話が分っているのかほんやりとそれを聞きながら、お礼を言い深々とお辞儀をして、家の方へ帰っていった。 おばあちゃんのタバコ屋だったこの家には、今でも店舗スペースだった土間や、柱に貼られた神社のお守りとか、壁に残ったキズや、生活の痕跡がたくさん残されている。そんなザラザラした家のノイズを、僕は気に入っていたし、そのままにしておいた。 そして今、僕がここに来て2ヶ月で、たくさんの人と過ごし残していった痕跡(天井にはパーティーの時に作った紙で作ったカラフルな輪っか、壁にはアーティストが貼っていった絵や文章…)が、おばあちゃんの残した空間内でコラボしている。 この町自体にもそんなノイズに溢れている。宿泊客がこの町の良さとして「昭和っぽい」と言っていたが、それはただのレトロとかノスタルジーではなくて、おそらくこの町の風景のなかに残っているざらついた生活感や人と人との繋がりの風景、そして窓から入ってくるおばちゃんや子どもの会話や音…、そんなノイズなのではないかと思う。 それは逆に言うと、日本の色々な場所でそんなノイズは消えていって、フラットで生活感のない風景が広がっているということなのだろう。 この町が持っている生活感はココが工場地帯の住宅地として誕生した経緯のなかでゆっくりと育ち、それを残しながらも今、ゆっくりとその機能を終えようとしているように感じる。近所の千鳥橋駅の裏の停滞し澱んだ運河が、埋め立てられ新しい道路や公園に変わっていくように、この町も今後新しく生まれ変わっていくのかもしれない。 それは仕方のないことなのだろう。ただ自分も含め今回この場所に少しだけやって来た人にとって、この風景が失われていくことは残念に思ってしまうのではないか。 ただ外部の者が、「保存しよう!」なんてことは言うつもりはない。ただこの町の生活が作り出したここの風景の流れが停滞しないための少しの仕組みとして、この町と寄り添いながらコラボし年を重ねていく機能が、このモトタバコヤや町を使ったプロジェクトで生まれるといいなぁ…と、モトタバコヤの祭りのあとの静けさのなかでそう思う。 イベントが行われた暑い夏は過ぎ去り、町の路上花壇からはキンモクセイの香りがしている。窓から豆腐屋のカランカランという音が聞こえてきた…、ヤバい早く片付けなければ、ラーメン屋台のチャルメラが聞こえて来る時間になってしまう…。 (つづく)
by homemadestory
| 2009-10-16 15:10
| story2
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